ロバート・アルドリッチの代表作といえば『ヴェラクルス』『特攻大作戦』『北国の帝王』『ロンゲスト・ヤード』など男・男・男の映画、リー・マーヴィンやらアーネスト・ボーグナインやらイイ顔したオヤジ達を大鍋にぶち込んで一晩煮込んで出来た漢の煮凝りのような映画ばかりである。
もちろん『何がジェーンに起こったか?』のような女性が主役の映画もあるが、女性の愛憎と狂気を容赦無く描いて、思春期に見てたらインポになりそうなトラウマ必至な映画だがそれはまた項を改めて。
さて、そんな男の映画を撮り続けた巨匠アルドリッチの遺作となったのが『カリフォルニア・ドールズ』
女子プロレスタッグチーム”カリフォルニア・ドールズ”がドサ回り巡業を続け、泥レスに出場させられたり、悪徳興行主に枕営業させられたりと苦労や屈辱を味わいながらも栄光の座に突き進むスポ根・ロードムービーである。
普段はケチな中年で一見すると悪徳マネージャーのようにも見えるが、この二人に対しては深い愛を感じさせる。
ファイトマネーを値切られたら干されるのを覚悟の上で興行主と戦い、終盤の大舞台で彼女達を鼓舞するために彼が施す過剰なまでの演出は感動ものである。そんな彼の時には無様にも見えるが筋の通った心意気はアルドリッチが描き続けた男のものであり、彼のパートを見てると女子プロレスが舞台でもやはり漢の映画なんだと実感させられる。
プロレスマニア的にはミミ萩原・ジャンボ堀のファイトが見られるという楽しみもあるが、WWEに制覇される前の、それぞれの地域にプロモーターが勢力を持っていた昔ながらのアメリカン・プロレスの雰囲気を味わうこともできる。
本作は権利上の問題でDVD化等されてないが、今回のニュープリント版上映後もソフト化の予定は全く未定らしい。12月2日に閉館を迎えるシアターN渋谷のラスト上映となるこの作品のクライマックスの白熱するラストファイトは是非劇場で体感していただきたい。