久しぶりの川崎である。
数年前にCUE氏、切腹五郎氏と飲んで以来である。しかし、その時は飲みオンリーだったので夜来て夜帰っちゃったので、見聞としてはネオン方面のみであった。
で、今回はイロイロと見てやろうと宿もしっかりと押さえて、まだ明るい内にJR川崎駅に到着。
自分の中での川崎のイメージはやはりブルーカラーの街ということで、基調色は灰色って感じなんだけれども、最近はモロモロの開発が進み、どうも自分のイメージってのは結構古びちゃってるようなんですな。その辺の更新もしっかりとしようってわけなのだ。
というわけで、改札を出てみるとナンダカそこからもうイメージが違う。埼玉出身者的に言うと大宮駅がエライこと変わってしまった頃を思い出すような感じ。泥臭さをどこぞへと上手く排除したような、というか。まぁ大宮よりもパーフェクトに上手く行ってるわけだが。
で、まず向かうのは西口。まだ見たことがないラゾーナ方面へ。かつての川崎らしからぬ場所が出来たという噂は聞いてはいたものの、それこそ噂しか聞いたことがなかったので、まぁここに来てしまえば新しい川崎像というのもが一気に分かるだろうという浅はかな赤坂見附なのである。しかも、駅どなりだけにお手軽で大変結構。
それにしても、そこへ向かう人、帰る人もなんとなく垢抜けた感じではある。この点は以前からCUE氏からも聞いていた。
で、入って行くと想像していたイオンモール的なものと違い、妙な高級感がある。というか入っているブランドもそれなりだ。
見て回ると、なるほど上手いチョイスだと思った。実質マイルドヤンキーに分類されつつも、上昇志向が強烈ではない程にややある、といった層を押えておるわけだね。開発が進むと共に川崎に増えている新住人ってのはその辺りなんだろうな。郊外からを自らを峻別する都市部住人としての妙な自意識を胸にっていうね。
でも、中のユニクロに入ったら客が上手く列を作れないのか、店内にビニテで誘導線があったりして、オサレな店内台無しという。こういった感じか。
というわけで、あっという間にオレ的理解をして納得してしまったので、とっとと宿のある東口へ向かう。市川金田一の轟警部並の雑さだが、本人が納得したのでイイのだ。
こちらも何やらキレイになってはいるのだが、喫煙コーナーを見てみると地面が吸い殻だらけで、アチラコチラにガムを吐いた跡が目立つのだった。この辺りは変わっていないようで何よりである。
オールオッケーとその場を去り、駅前のブックオフで夜読む本を確保してから、市役所前のホテルへと向かう。実は当日は朝から歩きづめで、しかも炎天下で大汗をかいたのでシャワー浴びちゃいたいのである。
ホテルに着くと何故かシングル予約のはずがツインだったり(部屋がなかったようで値段は据え置きで)したが、ソレ以外はつつがなくシャワーを浴びて、ダラダラとベットに横になっているとCUE氏から連絡が来る。
とっととホテルを出て、駅近くで合流。CUE氏の地元であるのでお任せなのだ。
アチラコチラが混む金曜日の夜ってこともあり、ややウロウロした後に落ち着いたのが丸大ホールなのである。
創業は昭和11年(1936年)。二・二六事件が勃発して日本が妙な方向に向かっていった頃に開業っていうから、近隣で軍需産業系に従事する労働者相手の店として出発したんだろうね。「ホール」って付くのもその頃っぽさが濃厚。
そして、高度成長期からバブルを乗り越え、現在も基本的な客層は変わらず、シフト制の労働者達に対応するため、朝8時から営業して飯と酒を提供する、老舗大衆食堂である。
前から来てみたい店ではあったのだ。
当然の人気店なので(しかも金曜日だ)、入れるのか不安だったが、うまい具合にポッカリと席が空いていて、そこにスルッと滑りこむことができた。
どうも曜日の関係でガッツリ腰を落ち着かせて、というグループが多いようだが、労働者系の人は短期決戦型でガツンとやって帰る人も居るようで、基本満員なんだが、それで席がちょくちょく空いたりすることもあるようだ。
それにしても、ババア店員の客あしらいのカアチャンっぷりが気になる。
なお、CUE氏もこの店は初めてだそうである。地元っつっても一人で飲みに入れるような店じゃないもんな。
いつもの様に生でキメると、すぐにビールと突き出しが出てくる。
と、一杯飲んで落ち着いたトコロで店内を眺めると、連邦軍のジムよろしくのホワイトなサラリーマン一辺倒といったわけではなく、茶色・灰色が混じっている。正しい勤労者階級と言った感じがモロで、流石老舗大衆酒場である。神田の大越に匂いが近いねという話にもなったが、その辺はやや違う。飲みオンリーではなく、明らかに夕飯主体といった人がチラホラ。
ここで、突き出しをツマむと、肉じゃが風かと想像していたら、ごま油がビシッと聞いた予想外のモノで、店の実力を示すということでは、突き出しらしい突き出しである。
店内のメニュー書きにはしっかりと飯が。丼ものが強いってのが大衆的だね。ラーメンとカレー、丼ものとラーメン等、バットマンにスパイダーマンみたいな贅沢な注文もイケるわけだ。
ここで、注文となるわけだが、実はビール注文時にこれに書いてと、ババア店員に紙とペンを渡されていたのだ(記入・CUE氏)。ここのババア店員、全員注文を記憶する気が限りなくゼロに近いブルー。こういった有り体のババアをメデるというのが、ここの特徴と言ってしまって良いようなんである。
他の席でも、注文どっちだったかね、みたいなことが頻発していてナカナカ愉快。客はみんなそれを暖かく見守るという、大相撲紅白歌合戦会場のようなやさしい空気が漂っている。
なお、都内の居酒屋ではデフォルトで居る外国人店員は全く見かけない。厨房は仕切りのオッサンを除いて、ほぼババアである(ババアというには申し訳ない女性が一名)。この店員の男女比も大越と反対で面白い。
とかババアを眺めているうちに、注文したものがポンポンとやってくる。
まずは、ピリ辛ウインナー。これは説明の必要ないな。当然、塩味濃ゆし。
次は、朝鮮もやし。よく生き残ったなっていうネーミングだが、これもガシっと辛い逸品。まぁ“朝鮮”と川崎は縁深いからね。
そして、定番のアジフライ。表面がカリッとガリッの中間くらいで揚げてあり、クランチ感覚がすばらしい。であるのに中の肉は厚め。
全体的に言えるのは味やら何やら含めエッジがエラく立っってるということ。この辺りもデスクワーカーではなく、額に汗して~という正しい労働者のためのものっつーことなんだろう。汗かくと濃いもん食べたいからね。
ここで自分らの隣にそっち系の労働者と思われる二人連れが入ったのだが、彼らの注文をババアが案の定覚えておらず、何故かCUE氏が教えるという展開はともかく、非常にハッピーな感じに食い物注文し過ぎて「いやぁ」とか言い合うというようなやり取りに妙な慰安を感じる。
彼らがササクレだって酒を飲むというイメージは一部を極端化したもので、実際酒場で悪質で面倒くさいカラミを演ずるってのは、ソコとの区分を付けたがる(エセ)インテリおよびリーマン層だったりするんだよね。特に部下(あるいは弟子)を連れてマウンティングに来てるイイ歳のアート系とかリーマンが最悪だったり。
とか、店を褒め称えつつ、ババアが楽なようにとツマミが残った皿をまとめていたら、「汚らしい!」と怒られて新しい皿をくれたんだけど、微妙に濡れているんですが~という。
続けて焼きそばがやってくる。麺が九州ラーメンで使うような細めでやや固いもので、よくあるズルッと感はなく、非常によろしい。しっかりと味付けされているのに、辺にしつこくないのだ。正直、追加しても良いなと思わせるくらい良い。
というか、ここの麺は基本この細麺なんだな。ラーメンとか普通に昼間来て食いたい。
と、このことがあったので次の朝にどんなもんか店に来ちゃったのだが、休みなのだった。
というか、店内に「明日 休ませて頂きます」って札あったの、CUE氏に言われてた(自分の背中側にあった)だけど、すっかり忘れてた。
こういう札があるってのは、飯の場所としてココじゃないとって人が多いんだろうな。ただ飯を食うなら、そこらに吉野家とか松屋あるし。
トドメは毎度おなじみハムカツである。
ハムカツ自体は、ロースハムを重ねたミルフィーユタイプ。あくまでもサポートといった感じの、出しゃばらないチープさが好感。
ここの揚げもんにはオカズでもあるんで、基本ポテサラ付いているんだね。なるほど、この酒だけじゃない、日々の飯を食うトコロでもあるってのが、この店のミソと言って良いだろう。店内にあふれる柔らかい暖かさ。なんというか『魔女の宅急便』のエンディングのユーミン風味って辺りは、リーマンが愚痴ダベる場所じゃないんだぜっていう、ある種の健全さを感じる。
てなわけで、なんだかサワヤカなまま終わりなんだが、都内の居酒屋との何事かの違いを見る上でも、是非再訪したいと思った次第。身を置いて気分のイイ店だってのは間違いないっす。
まずは、飯メインで来たいね。
丸大ホール
住所:神奈川県川崎市川崎区駅前本町14-5
電話:044-222-7024
営業時間:8:30~22:00(L.O.21:30)
定休日:不定期
神奈川県川崎市川崎区駅前本町14−5
丸大ホールを出た後は、CUE氏の案内で夜の街を探索する。
川崎の堀之内と南町を中心とした写真の撮れない辺りである。恐らく、そういう場所を訪れると緊張するという人も多いんだろうが、二名共にむしろ落ち着くという。アムロの「僕には帰る場所があるんだ…」感というか。いや、別に帰らないけどさ。
さらにチネチッタやらを見た後、何故か日高屋に落ち着く。CUE氏は昼飯も日高屋だったらしく、本日二度目だという。
自分はどうも昼間歩いた疲れが出てきたらしく、頼んだ酒がいまいち進まず、なんだか飯メインになってしまった。よほど丸大ホールの飯シフトが頭に残っていたのだろう。
ということで、今回の川崎訪問の総括だが、この街には良くも悪くも“猥雑さ”が残っているのだな、と思ったり。
谷崎潤一郎が戦前の一時期の浅草の良さを、この“猥雑さ”と『鮫人』で書いていたんだが、残念ながら都内ではこの街としての魅力(あるいは徳義といってもいい)は、ある種の階級やカテゴライズが強くなる中で、ほぼ絶滅してしまっている。
CUE氏もこの街の度量というか、何事をも受け入れていく幕末期の西郷隆盛のような無駄なケツの穴のデカさというものを指摘していたが、この辺は新規住民が増えつつも変わってもらいたくないもんだね。
この辺りの何故か話ってのはいずれ押さえようと思う。
つーわけで以上。
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一度行ってみたいです