CUE氏にアサヒビール工場見学のお誘いを受け、大分先(1ヶ月くらい前だった)のことだし、川崎在住のCUE氏が誘ってんだから近所なんだろうと、メールで来た内容をなんとなく見ただけで快諾。で、1ヶ月後、そういや明日だったよなと、内容を確認してみると、場所は「神奈川県南足柄市怒田」とある。ん、足柄って金太郎さんのところだったかと言いつつグーグルマップで確認してみると、神奈川っつってもメチャクチャ端っこの方じゃん!遠いやん!
CUE氏に連絡を取ると、どうもCUE氏も近所だと思っていたらしく、お互い前日になるまで詳しく調べないという何時ものようなフリチンっぷりである。というわけで慌ただしくルートを決めていくわけだが、ビール工場では試飲させてくれる関係で基本車では来ないでねシバリがあるらしく、主な移動手段は電車っつーことになる。まぁ個人的にはソッチの方が面白そうなのでいい。電車となればネットで時間を調べるだけなのでアッサリと決まって行き、細かい部分は毎度おなじみその場その場でどうにかなんだろ的流れで当日を迎えることになったわけである。
どうにかなるだろ的余裕をかましすぎて東京駅に着いたのは結構ギリギリ。慌てて弁当を買ってホームへ向かおうとするが、新幹線乗り場前の定番駅弁売り場が工事中。近場の派手な駅弁売り場に入ってみるが、どういうわけか東北フェアとかでそっちの駅弁しか無い。うーん、定番のシュウマイ弁当か、新幹線ジャンク弁当と言えばのチキン弁当買おうと思ったんだが…。
と、嘆いていてもしょうがないので、秋田比内地鶏弁当とやらを買って急いで電車へと乗り込み、弁当を広げるとちょうど電車が動き始めた。弁当普通に美味かったんだけど、東海道線で何故秋田駅弁という不本意さがまぁアレである。
品川駅東側のオモチャのようなビル群の横を通る頃には弁当も食い終わり、久しぶりに渡るアパッチけん川(別名・多摩川)に何かブルーシート増えたなと眺めたりしている間に川崎到着。CUE氏がシュウマイ弁当を片手に乗り込んで来る。なんでも、これしか売ってなかったとのこと。流石、崎陽軒の直接勢力圏内だ。ビールも買ってきてるし。
CUE氏の弁当を食いながらの鶴見、京急などのローカル話を聞きながら横浜を通過。埼玉東北部の全く起伏のない土地で育った人間には異様に見える保土ヶ谷辺りからの何でこんな崖みたいなトコロに建てちゃったの住宅地を横目に見ながら小田原の後のルートに関しての説明を受ける。なんでも大雄山(だいゆうざん)線という(CUE氏曰く)言葉の響きに若大将的なものを感じる鉄道に乗換えるとのこと。西武系だというので堤康次郎と五島慶太の箱根山戦争時に作っちゃった路線だろうかと思ったが、どうもは関係は無いらしく、曹洞宗・最乗寺の参詣鉄道として作られたものであるらしい。いずれにせよ埼玉出身者からするとよう知らん路線だ。小田原駅に降りるのもガキの頃に家族と登山鉄道に乗って箱根に行った時以来だしな。
てな話をしながら大船を過ぎて電車が西へ鼻先を変えると、埼玉南部あたりのような見慣れた風景に景色が変化していく。どうも首都圏ヤンキー地帯は何故かどこも同じニオイがする。ただ、どうも埼玉よりもベッドタウン要素が強いのか、やや生活感が希薄な、というか駅周りを覗いても商店のようなものが少ないような気がする。建売が少なくなって、イジくった外観の建物が増えてくるとベットタウンも終わりなんて話をCUE氏がしていると、ちょうど平塚を過ぎた辺りから、そんな家主の自我と一体化したような家が増えてくる。都心へ出勤する限界点といった辺りか。そういや燃えちゃった吉田茂邸はこの辺じゃなかったか。
海っペリの国府津を越えると小田原はもうすぐ。酒匂川が見えてきて、そういやここ黒澤明『天国と地獄』の舞台で邪魔な家の二階潰したんだっけなとか、夢枕獏『闇狩り師』の馬黄精の回・冒頭のうなぎの稚魚取りとか思い出したりしながら小田原に到着。どやっと電車から吐き出されて向いの小田急線ホームを見るとエラク立派になってるのが見える。
そのまま人の流れに乗って階段を登るが新幹線口と一緒になっているからか妙に階段が長い。なんか知らんがカロリー計算的な目盛も書かれてるし。観光で見てるこっちは良いが普段の利用者は舐めてんのかってならないのか、これ。
うーん、しかし、カナリ立派になっちゃったからかガキの頃の印象と一致しないな。引っかかるのはかまぼことかの看板くらいか。改札の真上にドデカイ小田原提灯がありやがるし。そして、どこにでも居るジジイババアのリックサック集団がここにも。
さて、大雄山線は~となるわけだが、まだチト時間が早いということで、駅前ウォッチングでもしてみるかということになる。妙に高い改札口から降りていくようなカタチで海側(東口)のロータリーに出る。と、見上げると懐かしい感じの百貨店ビルが。これは記憶にあるな。しかし、どうもこの駅前も昔は観光地的色調がデフォルトだったような気がするが、地方都市的色調の方が強くなっているようである。やっぱし観光地としてはイマイチ振るわなくなっているんだろうか。
サクッと路地やらを眺めてウロウロしているとCUE氏が地下街?への入口を見つけたので当然のように降りていってみると~。妙に暗いなと思ったらオールシャッター。何これ、昼から営業なんだろうかとも考えたが、どう見てもこうなってからしばらく経っている感じで何か全体的にホコリがそれなりにかぶっている。腐臭って辺りじゃ何か好みのパターンが出てきたなというか。といってもまずはビール工場ってことで、この辺は戻ってきて時間があったらだな。
大雄山線のホームは駅の端、高いJRのホームに上がっていく途中にある。正直スイカが使えるというのを除けば、上にある天狗の看板やら切符販売機やら、改札向こうに控える伊豆箱根鉄道5000系車両やらから妙なデジャブ感出まくり。埼玉県人的には昔の秩父鉄道臭がする。これやっていけるんだろうかと、改札前で立ち尽くしてしまったが、ちょうど電車が到着したので見ていたら、結構人が降りてくるのだった。登山鉄道と違って観光シフトじゃなく、地元の足としてベタに定着しているんですな。こりゃ失礼。
切符販売機もこれまた懐かしい感じで。というか最近切符買ってないな。
伊豆箱根鉄道5000系は正面から見ると、藤子・F・不二雄風というか世代的に妙な親しみを感じるデザインである。しかし、以外にも1980年台から1990年台生まれのそれほど古くはない車両であるらしく、細かい部分の更新も色々とされているらしい。ボンネット型特急車両辺りと同世代かと思ったよ。
乗り込む前にホームの先に行くと単線だというのが分かる。ケーブルカーみたいなもんだな。
いざ乗り込むと出発時間はまだちょっとあるのにパラパラと人が座っている。日曜のローカル線にしては混んでいると言えるだろう。社内も殺風景なのかと思ったらしっかりと中吊り広告も並んでいる。『よりとも政子バル』なんて地方イベントの中吊りもあるし。しかし、この手の地方とりあえずイベント路線というのは考えさせられるものがあるな。頼朝挙兵830年祭事業とかいうもんらしく、頼朝が「みんなでウィー!!」とか言っちゃってるし。自分達が後世の飲みイベントに夫婦揃って使われることなんて1ミクロンも想像していなかっただろうな(しかも何故スペイン)。功成り名を遂げた人というのは、貧乏で死んだ一葉女史がお札になってしまったように、後の時代ではただの公共物にすぎないのである。
諸行無常な気分に浸っているとベルが鳴り電車が動き出した。いやー、家が近い近い。CUE氏が神奈川のローカル線はこんなん多いよと言うが、普段JRくらいしか乗らない人間からすると結構珍しい景色だ。と、次の駅はとドア上の路線図を見ると、エライ味のある絵入り路線図(というか案内図)があった。昔の電車にはこういうの必ずあったなぁ。絵の人物のトレッキングスタイルからして70~80年台くらいか。シールだけどAsahiビールも一応あるのね。というか結構行く人が多いんで貼られたんだろう。
流れていく景色を眺めながら首都圏辺境的悲哀のバリエーションを語り合う内に終点・大雄山に到着。ホーム屋根が木造で質朴な感じが大変よろしい。
ホーム横にかめ池があるのも結構。これ、JRじゃ無理だろうな。
駅名標のフォントも味があるよなぁ。
外に出ると駅舎自体も質朴な感じ。駅舎から出たところに金太郎像がケツを向けて居るというのは観光的にどうなんだとか考えていると、CUE氏が結構時間やばくねと言うので携帯を見ると確かにビール工場行くには余裕が無い感じ。思ったよりも乗ってる時間が長かったんだな。しかも雨まで降って来やがった。しかし、どういうわけか駅前にバスもタクシーも止まってないのだ。確か、ビール工場行きのバスはあるはずなんだが。なんだよ、この駅。
仕方ないので十字路の方に行ってみると、ちょい先にコンビニがあったのでとりあえず傘を買ってみるが、やっぱりロータリー的なものの影も形も無いわけで、ビール工場を前にして太川陽介と蛭子能収かという自体に陥ってしまったのである。ナンカらしくなってキター。
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が、駅に戻って聞くしか無いかと雨の中早足で戻っていくと、駅の先の方から人を乗せたタクシーが走って来た。ん?と先に進んでいくと、駅舎の右手奥、金太郎像の先の一段上がったところが見えないような感じでロータリーになっていて、そこにバスやらタクシーやらがいやがったのである。GoogleMapでも分かんねえよ。全員集合のコントセットみたいな造りの駅だったんだな。金太郎の設置方向もそうだが観光地的にこれでいいのかと余計なお世話的なモヤモヤを感じたりしたが、蛭子能収に成り果てることもなく、まぁそれなりにスリリングで面白かったので良し。無事タクシーに乗り込みビール工場へ。
ビール工場へは15分ほどで到着。流石にきれいな水を使用するという目的で建てられただけに風光明媚な場所である。しかし、雨が降っていることもあり、外に人の気配はなく、これ他に見学者居るんだろうかとチョイ不安になる。と思ってたら、後からまたタクシーが来て何かヤンキーっぽいアンちゃん達がどやどやと降りてきた。少なくとも自分達だけってのは無さそうである。
と、ズズいっと建物の中に入って行くと結構な人が居るのだ。みんなそんなにビールタダで飲みたいのか。人のことは言えんが。メンツを見ていくと年齢層はそれなりに高め。未成年駄目だしね。その為どうも子供が手離れした辺りの夫婦辺りが多いような。後、ちょっと謎とややこしさの入ったカップル。
受付を済ませた後は、施設の説明的展示を見ながら時間を待つ。といっても、ギリで来たんでまぁ五分ほどで案内役のお姉さんに呼ばれることになった。
まずはカネ集め大学の視聴覚室のようなところに適当に着席。当然のように自分達は一番裏に陣取る。案内役のお姉さん(自分達専属)が登壇し、ここからビール工場見学のスタート。一応見学前の基礎を押さえるってことで、スライドショープラスDVDでベタベタなビールの歴史を駆け足で学んでいくということになるんだが、最後はアサヒスーパードライで締めるお約束がそれなりにウケていた。その後のお姉さんのお話を聞きつつ、ケミカル・ブラザーズ「Star Guitar」のPVみたいのにアサヒスーパードライがやたら出てくる洗脳系ムービーを延々と流して諸方面から問題にされたりするのが面白いんじゃないかとか妄想したりしたが、無理だよな。
さて、いよいよ工場へ。こっから写真不可なのでザックリと。しかも、肝心の工場なんだけど、土日の休みで稼働してないんだよね。とはいえ、アホほどでかい工場内の見学はナカナカ面白く、ビル並の大きさの発酵タンクや、途中に挟まる乾燥ホップのニオイ嗅ぎとかも面白かったんだけど、一番のツボはアサヒビールの歴史が結構細かく書かれたパネルですかね。ちょっと自社至上なプロパガンダ風になっているのが味があるんですな。ただ、一緒に見学していた方々は全く興味が無いらしく、じっくり見ていたCUE氏と自分は思いっきり置いてけぼりになってました。それにしても見学コースが工場とは別途有力国会議員が居る選挙区のハコモノ並に金をかけられていて、ある種の広報としてガッツリ力を入れているというのがよく分かる。自分らもこうして来ちゃってるわけだしなぁ。
もう一つ面白かったのは、自分達の見学グループと途中ですれ違う他のグループのメンツがまるで違うってこと。自分らのグループは妙に老若男女妙にバラけたメンツなんだけど(謎の単独年配者が居たり)、他のグループはどっかの町工場か、飯場の慰安旅行みたいなよっしゃよっしゃなオッサンオンリーだったりして。このあと、温泉旅館でピンクコンパニオン!みたいな。この辺、CUE氏とウチらだけインターネットで応募してきたメンツなんじゃねと話しあったりもしたけど、旅行会社がそういう方面向けにここ込みのツアーとかやってるんでしょうか。確かにハケそうプランではあるけれど。
工場をグルっと回って最後はビール試飲。ほとんどの人はコレが目当てのようである。入口にビールサーバーがあり、そこから両端の奥が広がった部屋の片奥に通されると、それぞれの座席に何やら書かれた紙があり、その上に試飲用の小さなコップが3つ置かれている。着席すると、下の紙はこれから飲む外国ビールの銘柄説明で、左からドイツの「レーベンブロイ」、真ん中がベルギーの「ヒューガルデン・ホワイト」、最後がイギリスの「バス ペールエール」といった並びで簡単な説明がされているのが分かった。これからコイツらを飲んでいくわけだ。というか、どういうセレクトなんだろうと思ったけど、アサヒが代理店やってる銘柄なのね。そりゃそうか。どんなビールかは以下からよろしく。
https://www.asahibeer.co.jp/worldbeer/index.html
というわけで、試飲していくわけだけど、正直小さい試飲コップだとイマイチよう分からんってトコロです実際。四人で分け合って飲むという感じだし、グイっと行かないとなんとなくね。オコゲスタとかいうくそショッパイが後を引くスナックをツマミながら日本人は慣れてるドイツビール飲みやすいんじゃないのかなぁ~と言っている内に終わるという。
というような感想をテキトウに紙に書いていると、お姉ちゃんが終わった人からスーパードライ飲み放題タイムですよ告知。すると、みんなドカドカと立ち上がり『スターシップ・トゥルーパーズ』のバグよろしくワラワラとビールサーバーの周りに群がって行くのでびっくりした。そんなスーパードライ飲みたいんかい。なるほどみんなこっちがメインなのか。
そんなバグ共にビールを注いでマイケル・アイアンサイドばり(死ぬのか)に捌いているのが、自分らを案内してきたお姉ちゃんなんでまたビックリ。アルペンスキー競技かよ。
自分達もその流れに乗り、マイケル・アイアンサイド嬢にスーパードライを注いでもらってくるが、ここまで来ての失礼千万というか、自分もCUE氏もスーパードライがあんま好きじゃないことが発覚。なんだこの滅びの山に指輪捨てに来たけど、実は誰も指輪に興味なかった感は。周りがうれしそうにスーパードライを飲む中、こっちはやや苦み走りながらそれを片付けていくという、「Englishman In New York」でも流れてきそうな疎外感事例となってしまう。ナントカ飲み干し、二杯目新作の「ドライブラック」とかいうのも注いでもらってくるが、口に合わず、申し訳ないことに残してしまった。スーパードライ好きにはホントたまらないんだろうなぁとは思うんですが。
飲み放題といってもスーパードライタイムはそんなに長くはなく、20分ほどでお姉さんが戻ってきてズルっとした感じでお開き。帰りに物販よろしくね、で以上。ということで何かみっともない土産はないかと物販へ向かおうとすると、部屋の片奥があからさまなピンクコンパニオン系のオッサン達によって専有されていて、ベタな花見宴会場のような風景になっている。上州屋のセールで買ったみたいな激安フィッシング・ベストにサングラスなオッサンとかいかにもである。
残念ながら物販にはそれほどトンガッた土産はなく、さっきツマんでいたオコゲスタを買って帰ることにする。なおこのスナック、ビールを飲みながらだとちょうどいい感じだが、それだけ素で食べるとショッパすぎてイマイチなので要注意である。CUE氏も買って帰っていたが家族には不評だったそうだ。それはともかく、お姉さんが今度はレジやってて万能過ぎる。しっかし、みなさん結構買いやがります。自分らも買ってるわけだけど。タダで呼んでも、広報プラスで完全に元取れるよな。
外に出ると雨は上がっていた。来たときは風光明媚ではあるが何か暗いという印象があったが、雨が上がってしまうとだだっ広さが心地よく非常に気分がよろしい。自分らは移動も楽しみつつここに来たが、バスツアー的なものの途中で来るのも車での拘束感が抜けてカナリ良いと思う。というわけで、何よりタダであるし、これのみで申し込んでも移動が苦にならない人は非常に楽しめる良いスポットなんじゃないでしょうか。ただ、出来ればスーパードライ大好きの方がいいとは思いますがね。
んなかんじで、ビール工場編は以上。あ、朝買った傘どっかで失くした。
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帰りは急ぐ必要もないのでバスで大雄山駅まで戻ることにする。バス停の途中の土産物屋でまた怪しげな土産を漁ったりした後、隣に何やら大きな店舗っぽいのがあるなと中を覗くとビール園だった。なるほど、こっちでも稼いでおるのね。混みまくりだし。
バス停に着くと向いには案の定、ツアー系の大型バスが数台止まっている。やっぱり、どっかの旅行代理店がアサヒビールと提携しているのかなぁなんて考えている内にあっさりとバスがやってきた。
大雄山駅着いたものの、そうポンポンと電車が来る路線ってわけじゃないので、ちょっと駅周りを探索してみるかということになる。まぁ毎度おなじみの流れだ。まずは、駅の向かいにドーンとあるピアゴ(ユニー系スーパー)に入ってみようということになる。自分も地方に行くと必ずスーパーとかに入ってみるが、大体その地方の状況が分かるんである。
ということでピアゴにいざと乗り込んでみるが、休みだというのにガランとしている。入っての食料品売場は老人がちょろちょとという感じ。というか、駅周りの通りからして人影があんまないんだけどね。土日だっつーのに。そのままエスカレーターを上がっていくと、何やら懐かしい感じの駅前スーパーそのまんまの造り。
上がっていってびっくりしたのはゲームコーナーがそこそこ大きく充実していて、そこにどこに隠れてたんだってくらい子供たちがウヨウヨ。首都圏の地方都市駅前周辺ってのは子供たちが遊べるような公園のようなスペースもなく、かと言ってふれあえるような里山的自然もすでに無いので、こういうパターンが多いんだけど、ここまであからさまなのは珍しいんじゃないかな。このように“文化”あるいは“自然”のどちらにも親しくできなかった子供たちの一部がヤンキーに育っていくのである。
何やら地方的閉塞感に触れてちょっと思索モードに入ってしまったりしたが、建物から駅に出る途中の居酒屋になかなか失礼な写真があってニヤリと復活(昔なつかしい ず~とるびの江藤君 ○○○来店 とある)。
駅に戻ると太陽が出てきて妙に熱くなってきたので、二人してグリコのセブンティーンアイス(自販機)を買ってしまう。買ってから手がデロデロになり後悔するやつである。地下鉄にたまにあるよね。
アイスを食いながら駅構内をフラフラしてみると、来た時には気づかなかったが新聞販売機の「ニュースくん」といい、中島貞夫の任侠物に出てきそうなキヨスクの販売員といい、運賃表を含めた様々な古臭いカンバンといい、いろいろと相当なもんである。この先の繋ぎの交通があるとまた来ても面白そうだなぁと思うんだが(御殿場線山北駅までつなげる計画もあったそうだけど)。
帰りは特にこれといった感慨もなく小田原まで。当然ながら戻っても探索モードである。先ずは朝見た地下商店街がやってんのかを確認しに行ってみるが、見事にやってねええええ。変な人間たちも入ってこれないような中途半端な廃墟感が警備員要らずで素晴らしいなんて感想をもっちゃったんだけど、帰ってから調べたらナントここ二回も倒産しちゃってるのだった。そりゃ妙な瘴気も漂うわ。絶賛再生中らしいが、小田原地下街の再生プランイメージがヨコチンしてるようなバカ小学生が書いた食物連鎖の図みたいになっちゃってて大丈夫なんだろうかと。
この勢い(なんの勢いだ)のままやはり朝見た雑居駅ビルに突入するが、こっちも上がっていくと店がほぼ入っていない階もありガラッガラ。というかこのビル何もかも細せえ。これは商売しづらいだろうな。残っているのはやっているのかやっていないのが分からない画廊とか新橋のニュー新橋ビルにあったようなマッサージ店とか。何故か銀座ライオンが入ってるってのがアレなんですが。
ここの事も帰ってから調べてみたが、この雑居ビルの名前は「箱根登山ベルジュ」といい箱根登山鉄道が小田原初の百貨店として開業したもんだっつーことらしいんだが、しばらくしたら思いっきり閉館のニュースが。2013年3月末日をもって営業を終了ということで、現在(2012年10月20日より)全館閉店セールやってるっていうけど画廊とか何やるんだ。
ニュースに「郊外商業施設との競合激化などにより」とあるように首都圏(というか地方)の駅前でありがちな問題が小田原でも思いっきり噴出していたっつーわけなのだ。自分の生まれ育った街でも駅ビルの店舗撤退からその利用が問題になったりしたんだけど、バラけて貸すといつの間にやら風俗ビルなんてことにもなりかねないってことでカナリの長期間空ビルとなっていたことがあった。幸いその後借り手があったからよかったんだけど、大概その後の流れとしては商業施設はアカンので、駅近で移動しやすいことを売りに高齢者向けマンションになっちゃうってパターンが多いようなんだね(というか今マンション買う金持ってるの高齢者だけだし)。小田原は一応駅くっついてラスカとかいう商業施設が新しくできてるんで(橋上駅舎化したのは2003年だそう)、駅周りはどんどんマンション化っつー流れが固いんじゃないかね。まぁ、ナンにせよある種の”滅び”ってことではいつものパターン入っていたんである。しかし、地下街はマンションにも出来ないし、厳しいトコロだなぁ。
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パターン入って足取りが軽くなったのか、どちらから言うでもなく何故か小田原城の方向へ向かっていた。まぁ一応古くからのランドマークだしね。そういや小津安二郎が出入りしてた花街も近くだったようなとかなんとなく考えつつ歩く。小田原城に行くのは小学校の林間学校(箱根だった)の途中に見学に寄って以来である。しかし、今はそういう形の団体客も少ないだろうし、現在の観光における小田原の位置づけってのはどうなってるんだろうか。一応、駅前にかまぼこやらの土産店はあるんだけど、どこかへ行く途中に寄るのかな。城への途中の道にも観光客向けの店ってのはほぼ無いような。
日がギラギラと差し、残暑バリバリの状態となった中、一気に天守下の広場まで上がる。上る途中にもパラパラと居たが、広場まで上がると女性コスプレイヤーだらけである。『戦国BASARA』『銀魂』『薄桜鬼』といった辺りが中心のようだが、まさかの『忍たま乱太郎』なんかも居たりして、とりあえず“時代物”という括りならオッケーのようだ。完全に他の観光客と関係性が断絶しているのが何か見ていて面白い。というかこういうのに解放ってのはナカナカ度量が広い。
小田原城の説明は今更必要ないだろうが、この城が一番輝いていた時代は後北条氏が支配していた惣構の城だった頃だろう。小田原市もその辺は良く分かっているらしく、3D化プロジェクトやらでは江戸期の近世城郭と共に、惣構の頃のもキッチリとある。秀吉の一夜城もあるってのは流石だ。なんでも城の中心部を江戸末期の姿に復元していく予定らしく(すでに門など一部復元)、有志による天守閣木造化運動もあるそうだ。あたりまえだけど、大事にされてんのね。まぁ観光客増の鍵でもあるしな。小学生の頃に復興天守だろってバカにしてスマンかった。
当然のようにその復興天守には登らねばならない。というわけで、展示物等はろくに見ずに(というか大したものは無い)今度も一気に天守展望台まで。この復興天守、結構古いため鉄筋コンクリート造なんだけどエレベーター、エスカレーター的なものは無いため結構疲れる。途中、爺さんが孫らしき子供に俺はここで待ってるから上行ってこいとブレイブハートっぽく登るのを断念しているのを見たりして。木造にしたら、更に年寄り上りにくくなるだろうし、この辺難しいところだね。
登り切って外に出ると流石に海風が気持ちいい。が、汗ダラダラであり、“さわやかな”辺りでは風量が全く足らないので土産店でみっともない扇子(小田原城透かし彫り)を買ってしのぐ。何か年齢層が若いのはやっぱり疲れて上がってこない年配者が多いんじゃないかな。
景色も大変よろしい。伸びていく伊豆半島、秀吉の石垣山一夜城、上から見た小田原駅、丹沢の山並、さらに現在はJRでぶった切られている惣構の頃の古郭もちょい確認できたりして(現在公園になっているらしい)、なんとなく範囲が分かったりするのも面白い。キッチリ晴れた日には伊豆大島も見えるそうである。これは登って見る価値はありだな。正直景観的に高すぎるマンションも目立つんだが(この辺もややこしい問題があるらしい)。
帰りも一気に降りて、流石に疲れ果てた。降りる途中、下に遊園地があるのも見えたが、もう降りる気もしなかった。というか、自分達酒入っているんだった。ビール飲んでからゴルフやって逝っちゃう重役モードだ。小津安二郎も疲労の彼方である。しばらく、コスプレイヤーの方々を見ながら休憩を取る。織田信長(戦国BASARA)らへんは暑そうだなぁ。
遊園地は数週間後にCUE氏が行ってみたそうなんだが、きなこ棒のような素朴さで大変良かったらしい。もらった写真も確かにそんな感じだ。乗り物一回80円という激安価格で、しかもその切符(チケット)も係員テキトウにしか見ないとのこと。
係員のオッサンの顔がまたナイスだな。こういうの埼玉県人でいうところのむさしの村って辺りか。いや、あそこ対比となる城みたいのが無いから“素朴”超えて“土俗”になっちゃうんだよな。
休憩して、やや回復したところで駅へと戻る。CUE氏が子供の土産に鈴蒲でかまぼこトミカ(だったか?)を追加購入し、ここでカエルのかっつーと、帰らないんだな。駅の逆っ側の探索がまだなんである。銀河鉄道でも出発しそうな箱根登山鉄道の改札前を通りぬけての西口は北条早雲像がドーンと置かれているが、何か東口と比べて殺風景な感じである。こっちは余り観光客も来ないんだろうね。
気になったのは左手にあるマンション。新幹線マンションとかいう思い切った名前のようだが、何やら遠目でも一階がごちゃっとしておりアンテナが反応するので近づいていくと案の定地下食堂街なんてものがある。首都圏のそこそこ大きい街には大概ダークサイドを抱え込んだ雑居ビル的なものが駅近くにあったりするが、どうもそういう場所のようだ。そういや自分の街に最初に出来たレンタルビデオ屋もそういう雑居ビルの奥に開店して、学校から行くなと言われたりしたもんである(その後熊谷から本サロが来て、すぐ摘発なんてことがあったり)。
降りていくとまぁ普通の食堂がまずあったりするんだが(なんでもモヤさまに登場とか)、奥はまだ明るい時間なのに「千鳥」なんていうイカにもな名前のカラオケ飲み屋が普通に営業してるわ、入口にガッチリとした南京錠のかかったフィリピンパブはあるわ(どう見てもただの”パブ”じゃない)、ゴミなのかなんなのか積み重ねられたスペースがあるわで、いつもの都心のそれの空気感とは違う、地方独特のものが漂いまくりである。う~ん、こりゃナカナカのもんだ。最後にいいもん見れたわ。ちょっと雰囲気にノマれちゃって写真撮れなかったんだけど。しかし、駅前のマンションの地下がこんなんなっちゃうんじゃ、高齢者マンションでの駅前復活ってのも平坦ではないなぁ。
ビール工場に続いてのしっかりと小田原のハラワタも見たので満足はしたんだけど、流石に疲れまくりで、どっかで飯食って帰ろうという気力もなく、駅弁買ってとっとと電車に乗り込むことになった(疲労困憊の中座れないことを心配していたが、大丈夫だった)。なお、特に面白い駅弁は無かったので購入駅弁はシュウマイ弁当である(CUE氏本日二度目)。で、だんだんと暗くなっていっく車窓を眺めながら、弁当を食いつつ感想戦~と。
んな感じで小田原は色々と大変な部分もあるようだが、城という中心軸があるおかげで地方都市的斜陽(失礼)な部分があっても妙な品のようなものが残っている街であった。御家人斬九郎みたいなというか。そのせいか観光地にありがちな押し付けがましさもないのでサクッと来るには結構良い街なんじゃないだろうか。実際、CUE氏再訪問しているしね。まぁ色々な意味でビール工場と色相の違いが出て良かった。自分も小津安二郎絡みのことはすっかりすっ飛ばしてしまったので、是非また訪問してみたいと思ってますってところで以上。
撮影もろもろ協力:CUE氏