秋葉原 肉の万世「灼熱ジャングルビアガーデン」 2013 ボンクラ座礁酒場

この記事には2014版があります。
よろしければ御覧ください。

ほんとうの“バカ”というものはナカナカに加減が難しい。狙いすぎても外れすぎても違うものになってしまい、こんなものはホントウのものじゃないよなと智恵子抄よろしく阿多多羅山の辺りまで見に行かにゃ無いんじゃねというような貴重なものなんである。であるからして、もしそれが存在し得たとしても、その維持というものも当然ながら至難の業ということになる。それが商売ともなれば尚更だ。基本ショーバイってのは狙いに行く行為なわけだしね。1980年代のヴァン・ヘイレンの一部PVのように軽々ととはイカンザキなのだ。
というわけで三回目(三年目)になる万世のジャングルガーデンなわけだが、その“バカ”テイストが商業ベースで無事に残っているのかということを確認することがすでに我々の義務となっており、「そこに山があるから」と語ったんだが語ってないんだかのジョージ・マロリーのように「そこにバカがあるから」通い続けねばならないのである。というかマロリー、エベレストで死んじゃってるんだが、都合の悪いことはメメントの主人公のようにどんどん忘れちゃえばイイのだ。山じゃなくてバカだし。
肉の万世(外観)
さて、当日。自分の方は仕事がぴったりには終わらずやや遅れて秋葉原方面へ向かっていると先に着いたCUE氏より「客も店員も居ない…本当のジャングル、本当の孤独」という八甲田山で遭難でもしたようなメールが来る。どうも立ったまま死んでいくのを木村大作に撮影されるような状況にあるらしい。流石にまだビアガーデンには早いのか(当日は梅雨明けはまだで、それほど暑くなかった)、プラス水曜日ということも入れても流石に神に見放される状況ってのはどうなのとか考えつつ万世橋まで着くと、万世ビルの威容が何かアイガー北壁のように見えなくもない。どっちがクリント・イーストウッドでジョージ・ケネディになるのかは知らんが。個人的にはオカマの殺し屋が好きなんだけど。
灼熱ジャングルビアガーデン入口
お約束的のようにブルースブラザーズよろしくイージーリスニングを聞きつつエレベーターで8階に上がると、最初に裸になって死ぬ役の大竹まことに成りかけのCUE氏がジャングルだっつーのに凍えそうになって入口前に居た。聞くとチョイ前に一組客が来たが、それまで店員もどっかに行っちゃってるようなラララむじんくん状態だったらしい。うーん、やっぱり週中だとガッツリ飲み放題とはイカンのだろうか。以前入口に何故か空気清浄機が大量に並んでいたが、今回はそれっぽくはなっているのに、ライトに和風テイストが入ってしまっているのが残念に惜しくて大変よろしい。
灼熱ジャングルビアガーデン
というわけでご入店。いつものように万世橋方面が眺められる席に陣取り店内を眺めると確かにガラッガラである。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』のあたるの酒池肉林の宴会シーン(ラムが居ないと発言後)みたいだ。毎度思うが何故混まない。電脳の街秋葉原だけにジャングルに忌諱感でもあるっつーわけでもなかろうに。逆に穴場だってわけだけど。
しかし、毎度お馴染みキャプテンスタッグのテントやらは、この人の居ない首都圏近郊の場末海水浴場感に見事にマッチしており、設置がややこなれて来ているジャングル装飾とともに、盛り下がった雰囲気をしっかりと盛り上げている。そして、音楽が無くなってオンリーとなったジャングル音の援護射撃もやや、というかうっさい位にボリュームアップされており、聞いているとコレでいいのだとバカボンのパパ的諦観と共に沖雅也のようにこの涅槃を受け入れようという気分になってくるから不思議だ。日景忠男も太鼓判を押すに違いない。
灼熱ジャングルビアガーデン 飲み物メニュー
置いてあるメニューを見ると、去年までエビスだったビールがサントリーのプレミアムモルツになっている。入口にも看板というかポスターあったな。確か、現在プレミアムビールNo.1ブランドなわけで、チキンと万人ウケといった辺りもキチンと押さえて行こうってことか?いろいろと定評のあるサントリーの営業努力かもしれんけど。
灼熱ジャングルビアガーデン 食べ物メニュー
ついでに食い物メニューの方も見てみるとラインナップがやや減っているし、CUE氏曰くの「世界陸上でTBSが選手に付ける変なキャッチフレーズ」みたいなものが無くなっている。そして、常設ハードルとして毎度超えなければイケないところの狂気のソーセージマウンテンが“ミートマウンテン”と名を改め一段減ったカタチで何やらマイルドに。というか、全体的にメニューは簡略化してるな。“登山”から“山登り”なった感じか。メニュー的には正直バカ度数はやや物足りなくなってしまったんだが、これも万世サイドの一般化、大衆化の努力として受け入れるべき変化だろう。1970年代のタモリから1980年代のタモリみたいなもんだ。
灼熱ジャングルビアガーデン ビール
店員がやってきて、当然のように“山”を注文。ついでにプレミアムモルツをたのむ(一杯目はセルフではない)と、ポップコーンと一緒にすぐに持ってきてくれたので、とりあえず乾杯。ポップコーンでビールってのは本当にたまにしかやらないが、ナカナカイイもんだと思う。変に腹を占領しないし。
灼熱ジャングルビアガーデン ミートマウンテン
ビールを飲みつつ、これもお馴染みの取り留めのなさ過ぎる会話がCUE氏の湘南モノレール押しまで来たトコロで今年の“山”がやってくる。前のアホほどソーセージが盛られたヘルツォーク的“山”とは違いメニューの品物が満遍なく盛られて、一段減ったんで無理すれば(しなくていい)二人で食えなくもない感じである。別途たのもうと思っていたとん足もしっかりと乗っかっているし、すくなくとも厭きることは無さそうだ。まぁ、レニー・ハーリン的になったと思えばいい。でも、同映画のスタローンじゃなくて、『ロング・キス・グッドナイト』のサミュエルポジションだよね、俺達。
灼熱ジャングルビアガーデン コンセント
ビールを注ぎに行くとケーシー高峰の医者コント並の変わらなさでコンセント丸出しである。毎回同じトコロにあるというのが、お約束を超えて注連縄的な意味合いも感じちゃったりして、そう思うとキャプテンスタッグのペナペナテントがオヤシロのように見えなくもない。いや、オヤシロにポップコーン置いてないだろ。危ない危ない、暗黒面なんだかよく分からない面に落ちるところだった。
なお、前は確かビール以外にはサワーがあったように覚えているが、サントリー化に伴い角ハイボールとなっている。
灼熱ジャングルビアガーデン 鳥のもも
席に戻り、再び“山”に取り付く。それぞれ流石に味がいいのでビールと共にスルスルと食い進めることが出来る。一番下にしっかりとした鳥のももが入っているんだけど、それが三本なので、恐らく三人で食うとちょうど良いんじゃないかと思う。少人数ならこれに枝豆でも行っとけばオッケーなんじゃないかな。沖縄からのゲスト・ミミガーはもう居なくなったかと思ったら、小鉢に入ってやがるし。いつの間にか居着いてしまった感がユカイである。他の階との協力体制を作れば多分ビアガーデン的な料理をはみ出すメニューも提供できるんだと思うんだけど、あくまでその的な枠を堅持するって辺りに妙なこだわりを感じる。まぁ、あんまやると「ビアガーデン」じゃ無くなっちゃうしな。
灼熱ジャングルビアガーデン 店内
しかし、その「ビアガーデン」って言葉を全く見ないで来るのか知らんが、二組ほど入ってから出て行く客が居たりするのがよー分からん(この頃にはちょこちょこと客が入って来ていた)。CUE氏ともナニを間違えるトコロがあるんだと話し合ったが、結局結論出ず。というかオマエラは「ビアガーデン」に一体ナニを求めているのか。百人に聞きました形式でまとめてもらって、一人だけお見送りになってもいいからナルホドと思いたいんだが、聞くわけにもいかんしな。いずれにせよ「ビアガーデン」観のズレなんだろうけど。
肉の万世からの旧万世橋駅
忘れていたのが旧万世橋駅のチェックである。すでに去年から再開発は始まっていたんだけど、なんだが草が生えていたホームや引き込み線がエライ変わり様で、ホームの上には妙な構造物まである。屋外デッキや展望カフェが出来るって話だが、ホームのがカフェで引き込み線がデッキになるんだろうな。しかし、なんでレトロ調で行かないかな。
灼熱ジャングルビアガーデン ビール
話の方は相変わらず脈絡が無いままレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン方面は進み、身体では胃袋方面だけそれに近しく伴走していくというリアル。脳ミソが付いていかずにまたビール注ぎに失敗しちゃったり。というか、やっぱ肉は消化していかないので貯まっていく一方になっちゃうのである。だっつーのに追加注文しちゃったりと。どうもここに来ると必要がないのに食うピッチが早くなってるような気がする。ナンシー関に礼賛されていたころの大食い番組とか見ていたからか。
肉の万世からの中央通り
結局、鳥のももやらが半端に残り“山”は制覇出来ず。もうちょいだったんだけどね。前のようにどうすんだよという量ではなく(というか少人数で注文するもんじゃないんだろうけど)、ビールのツマミとして味が考えられているもんが揃っているんで飲み放題的なものに行きたいって人には薦めやすくなったといった感じでしょうか。ただ、フリチン丸出しでザリガニ捕ってた少年が村上春樹をナナメ読みして聞いてて恥ずかしくなるような感想を語るような青年に育ってしまった感がどうもあって、バカに付き合っていたこっちがやや面食らった部分もな気にしもあらずだったりして。難しいもんですな、店のこういう変化をどう見るかって辺りは。というか、“バカ”見とくなら今のうちだぞ!

秋葉原 肉の万世「灼熱ジャングルビアガーデン」
東京都千代田区神田須田町2-21 8階ティアラホール
電話:03-3251-0291
平日:17:00~21:00(最終入場時間)
土日:17:00~20:00(最終入場時間)
期間:2013年9月6日まで

東京都千代田区神田須田町2丁目21

改装中の旧万世橋駅ガード下
と、後はお似合いなズルッとモードで下の万世橋酒場へ。そういや万世橋の向こう、旧交通博物館の一部だったガード下もなんだか薄っぺらい感じに改装中なわけで、ガキの頃に散々あそこの湿ったニオイを嗅いでいた身としては、何してくれてんだよって感想もないわけじゃない。なんでしょね今回。やっぱり“バカ”にはそれを裏打ちするペーソスが必要って辺りなんでしょか。しかし、こういうのも悪くないって思っちゃうのが酒のありがたみだったりするんでね。深みが出たんだか、出てないんだ、どうなの?って終わっていくのも又、楽しからずや。というか、出ねーよ。

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