前回紹介した激辛やきそばを発売して以降、我々ペヤング原理主義者の教団本部と言えるまるか食品は、「ペヤング 濃口ソースやきそば大盛からしマヨネーズ」、「ペヤング 牛タン塩やきそば」、「ペヤング 激辛カレーやきそば」と立て続けに微妙なラインの新商品を繰り出し、まるで「アギーレ/神の怒り」でクラウス・キンスキーが演じた主人公の彷徨のような商品開発っぷりに、流石の我々もエルドラド到着前に脱落しそうになっていたわけですが、当然ながら我らのまるか食品はヴェルナー・ヘルツォークやクラウス・キンスキーのようなキチ○イとは違います。ここでなんと、新商品としてフェティシズム丸出しの黒フィルムパッケージが美しいイカスミやきそばを決戦兵器のごとく出してきたのです。
今回も教団本部から新商品情報を拾って来ましょう。
イカスミを豊富に使用し、海鮮の風味を効かせたイカスミソースを使用しました。ニンニクをベースとした香辛料を効かせており、海鮮の風味と香辛料のバランスが良く、最後まで飽きのこない仕上がりになっております。
二回も「イカスミ」という言葉が出てきてしまう辺りに不退転の決意を感じます。この教団本部の決意に答えねばならぬと戦場(スーパー)へと走ったものの、どうも一部コンビニ(セブンイレブン)での扱い商品であったらしく、入手できたのは発売から数日後のこととなってしまいました。ペヤング教徒としては切腹モノの失態なわけですが~
パッケージを見ると当然のごとく「イカスミ」と影付き太文字で書かれているだけでなく、「漆黒のソース」とムーディーな文字の上にはしつこくイカのイラストまで登場。ノーチラス号を深海に引きこまんとするダイオウイカのように、無知蒙昧な他教徒達をペヤングやきそば界に引きこもうという決意の現れに違いありません。今回の商品は今までのようなよく見るとズッコケというアン・リー映画の人間模様のような微妙さは微塵も無いと言っていいでしょう。しっかりと見ていくと、黒フィルムにその道の女王様的な厳しさも感じます。
エネルギーは551kcalとなっており、ノーマルの518kcal、激辛の530kcalよりも上なわけで、マラソンやトライアスロンのような激しい運動の後の栄養補給として携帯するのも良いかもしれません。
パッケージを興奮しながら剥いでいくと、激辛と同じようなデコボコなしケース。ノーマルとは違うのはコレということで定着したということでしょうか。
そして問題のソース。いや~黒いです。九州で試合ができないアフリカ系レスラー並に黒くて、頭にヤシの実を食らったような衝撃が走ります。ただ、”漆黒”という割には何か白いものが混じっているなと、よく見てみるとラード系のアブラのようです。なるほど、これでエネルギー高めなんですね。
次にかやくのチェックとなりますが、激辛のかやく袋はノーマルのものと同じ色だったんですが、今回は緑色。多分イカスミだし魚介系が適当に入っているんだろうと、ザザッと皿に開けてみると期待に反して中身はイカとキャベツのみ。うーん、シンプルイズベスト。茶道ような削いでいっての自由奔放さといっていいでしょう。イカスミなんだし、イカでいいじゃんみたいな北方謙三の人生相談のようなストレートっぷりです。
妙な背徳感を感じながら白い麺の上に漆黒のソースを落とし、いつもの様にグリグリと。このグリグリタイムに幸せを感じない奴は地獄へ落ちるべきです。そして、今回のBGMは当然のようにローリング・ストーンズの「Paint It, Black」であるべきです。どんな色もいらない、みんな黒く塗りたいという気分で、いざ実食。
口に入れてみると、恐らく来るだろうと待ち構えていた違和感はどこへやら。ドシっとコシのある味で普通に美味しいですね。そして新商品情報にあったように変なキテレツさもなく、飽きがこないで食い進めることができます。いや、以外でした。激辛のような試練系かと思ったら、祝福系だったという。ノーマルほどの定番感はありませんが、たまになら食ってもいいような安定感があります。定着しても悪くないような。イカスミの味がするとかしないとかいう話はありますが、基本「ペヤング」という食い物ですから、そんな瑣末ことはどうでもいいんです。
というわけで今回のイカスミやきそば。千利休の”黒”とスティーブ・ジョブズの”シンプル”という禅を土台にした両者の思想を食品にしてみたような奥深さのある逸品に仕上がっていると断言してしまっていいでしょう。上で書いたようにペヤング教徒にとっては試練の後の祝福といった側面もあるので、ここ最近の新商品ラッシュで信仰がゆらいでしまった人は是非食べてみることをオススメします。